【JR東海認知症事故賠償訴訟】

2016年03月02日

平成28年3月1日、認知症の男性(91歳)が徘徊中に線路に立ち入り、列車にはねられて死亡する事故をめぐり、JR東海が男性の遺族に損害賠償を求めていた事件の判決がありました。

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/714/085714_hanrei.pdf(最高裁判決文PDF)

最高裁判所は、男性の妻に損害賠償責任を認めた第2審判決を破棄し、JR東海の請求を棄却しました。
判決の判断枠組みとしては、
・認知症の人と同居する配偶者であっても、直ちに監督責任があるとはいえない
・民法714条に監督責任者に当たるか否かは、介護の実態などの事情を総合考慮して判断すべき
との前提の下、妻が現実的に介護できる立場になかったこと、長男も20年以上別居していたことなどから、監督責任者に当たらないとしました。

この判決は、一律に監督責任者に当たるか否かを判断せず、介護実態などの総合事情から判断するとしている点で、事案に即した柔軟な結論を導くことができると思われます。この他に、過失相殺による大幅な請求額の減額もあり得るかとも予想しておりましたが、この考えは採られませんでした。
請求を棄却されたJR東海に対しては、認知症事故を防止する取組みができるよう補助したり、保険利用による損失補償などを検討し、社会全体で認知症の方を受け入れる体制作りが必要となってくるでしょう。