【公示送達に関する名古屋高裁平成27年7月30日判決】
2015年11月27日
訴訟を提起しようと思った際に、相手方がどこにいるかわからないために、裁判所に一定期間掲示される等の要件により、相手に訴状が送達されたことにする「公示送達」の制度があります。送達とはいうものの、裁判所の掲示板や官報をみて自分が訴えられていることに気付く人は皆無と思われ、事実上、知らない間に負けているということになりかねません。
この公示送達について、名古屋高裁平成27年7月30日判決は、弁護士法や民事訴訟法に基づく照会等をして、電話番号やFAX番号から相手を調査できる事案であったにもかかわらず、これをしなかったので民事訴訟法110条1項1号の要件(送達すべき場所が知れない場合)を満たさないとしました。
以前、どんな時に公示送達していいかについて検討したところ、「抽象的にいえば、当該事案で、権利関係の発生を公示送達によって決めていい事案かどうか」であると聞いたことがあります。当事者、事実経過、立証の程度、相手方の反論機会の保障の必要性、当該権利の重要性、内容などによって、どこまで事前に調査すべきかも変化する気がします。
判決文の事情からしかわかりませんが、本件については、紛争性もかなりあり、勝手に公示送達して判決してしまっては、被告の反論の機会を失わせる要素が強く、公示送達相当の事案ではないと考えられたのかもしれません。
ちなみに、原告の「弁護士会照会をしても回答が得られないことが多く意味がない」との主張に対し、裁判所は、「弁護士法23条の2所定の照会・・・に回答すべき義務は、秘密保持義務に優先すると解すべき」と判断しています。