【婚姻費用】

2015年02月03日

1 婚姻費用とは
別居期間等、今後の夫婦関係をどうしていくのかを考える間、「婚姻費用」の支払額をいくらにすべきかという問題があります。
「婚姻費用」と聞くと、なんだか結婚費用のようにも聞こえますが、内容としては、生活費のことです。
家庭裁判所においては、いわゆる「養育費・婚姻費用算定表」に基づき話合いが行われることが多く、情報流通が発達した現代において、弁護士委任をしていない方も、この表を前提に言い分を述べることがまま見られます。
そこで、今回は、上記算定表を用いるにあたって注意すべき点(算定表自体の見直し論は置く)を思いついたまま挙げます。

2 留意点
□ 住宅ローンが高額 結婚後購入した高額のマンションがあり、毎月高額のローンを支払っているといったケースです。この高額なローンを夫側が負担しているなどとして、費用を全額控除してしまうと、婚姻費用が大きく減ってしまいます。その結果、夫婦間の生活保持義務よりも、高級マンションの維持という資産形成を優先することとなってしまうおそれがあります。この場合には、標準的な住宅ローン負担額を念頭におき、算定表を一部修正する必要が出てくる場合があります。

□ 相手が無職
「今、仕事していないので払えません」といった言い分もあります。 これについて、一方の収入をゼロとして算定表に当てはめると、婚姻費用が極端に低額になってしまうことがあります。この場合には、稼働可能性及び稼働していないことにつき正当な理由があるかといった点を考慮し、修正を求めることがあります。「潜在的稼働能力」とも言いますが、働けるのに働かない状態でいる結果、婚姻費用の支払いがないとするのは不公平なので、このような考慮をすべきと主張します。

□ 私立学校負担金
標準的な教育費の負担を前提にすると、子を養育する側の負担が過度に大きくなってしまう場合があります。この場合には、現実に要する私立学校負担金の資料等を提出し、実態にあった教育費が支払えるように、算定表を修正する必要性を主張します。

3 まとめ
以上、ざっと掲げてみましたが、単純に双方の収入を照らし合わせるだけでは、的確な婚姻費用が決定されないケースもあります。
もちろん、双方合意の上で婚姻費用の支払いがなされることが望ましいと言えますが、折り合いがつかない事態を考え、理論的な説明をできるように、事前に準備をすることが有効といえるでしょう。